皮膚科
皮膚科とは
動物病院において最も症例数の多い診療科で、全身の皮膚や被毛に関わる疾患を対象とします。
皮膚病の代表的な症状は、赤みやかゆみ、脱毛、湿疹、しこりなどが挙げられ、異なる疾患でも症状が似通っているケースも多く認められます。また、皮膚病には完治するものとしないものがあります。後者は、症状が悪化しないようコントロールすることが治療の目的となり、生涯お付き合いが必要になるものもあります。
普段の食餌や生活環境、シャンプーの種類や頻度、定期予防の有無など、その子に関するたくさんの情報が診断・治療へのヒントとなるため、飼い主様のご協力が非常に重要な診療科でもあります。
よくみられる症状
- 体をよく掻く
- 足の裏を舐める
- 耳をよく振る
- 毛が抜ける
- 皮膚が赤い
- 皮膚が黒ずんでいる
- 皮膚がベタベタする
- 洗ってもすぐに臭くなる
- フケが沢山出る
- できものがある
当院でおこなう主な検査
- 皮膚スタンプ検査:病変部にテープやスライドグラスを押し付け、皮膚表面の細胞や病原体の有無を調べます
- 被毛検査:症状のある部分の毛を数本抜き、被毛内部や毛根部の異常、毛包の寄生虫感染の有無の確認をします
- 皮膚掻把検査:皮膚表面を鋭匙という器具で擦り、皮膚の中の寄生虫を検出する検査です
- 耳垢検査:顕微鏡で耳垢を観察し、病原体やダニなどの寄生虫がいないかをチェックします
- ウッド灯検査:病変部に特殊な波長のライトを当て、皮膚糸状菌というカビの感染がないかを確認します
- 培養検査:細菌や真菌の感染が疑わしい場合、病変部から検体を採取し病原体の特定をします
- 薬剤感受性試験:細菌感染がある場合、原因となる菌にどの抗生物質が効くのかを調べる検査です
- アレルギー検査:食物アレルギーやアトピーが疑われる場合、アレルゲンを特定するために行う血液検査です
- 除去食試験:一定期間決められたフードのみを与え、その後元の食餌に戻し症状の変化を見ることで、今の症状が食物アレルゲンによるものなのか、また原因となる物質が何なのかを特定するために行います
- 血液検査:内分泌疾患(ホルモン値測定)や代謝異常などの病気がないかをチェックします
- 皮膚生検:病変部の皮膚の組織を一部採取し、皮膚内部の構造や細胞を詳しく調べる検査です
皮膚科でよくみられる病気
アトピー性皮膚炎
皮膚トラブルの中でも最も発生頻度が高い病気で、環境中の花粉やハウスダスト、ダニなどが原因となって生じるアレルギー性疾患の一つです。
繰り返し起こる強いかゆみが特徴で、患部をしきりに掻いたり噛んだりすることで脱毛や皮膚の肥厚、色素沈着が左右対称性に起こります。3歳くらいまでの若いわんちゃんに多く、柴犬、フレンチ・ブルドッグ、シーズー、レトリバー種などが好発品種として挙げられます。体質による皮膚バリア機能の異常が原因であるため完治させることは難しく、生涯付き合っていく必要がある病気といえます。
かゆみをコントロールする治療がメインとなり、ステロイド剤や抗ヒスタミン、オクラシチニブ、免疫抑制剤などの内服の他、アレルゲンの除去やスキンケア、各種サプリメントなどを組み合わせて行います。
外耳炎
耳介から鼓膜までの範囲(外耳道)の皮膚に炎症が起こる状態をいい、わんちゃんに非常に多い病気です。原因は様々ですが、犬の耳の構造、耳の中の毛、アレルギー体質、真菌や耳ダニなどの病原体の感染、異物の迷入、腫瘍などの要因によって引き起こされます。
たれ耳の犬種、特に、アメリカンコッカ―スパニエルやラブラドールなどが好発犬種として挙げられ、耳介が赤い、耳が臭う、耳をしきりに振る、掻くなどの症状が見られたら、できるだけ早期に診察を受けましょう。
治療は原因と程度に応じて異なりますが、耳道洗浄、点耳薬、必要に応じて駆虫剤や抗生剤、抗真菌剤、消炎剤などの内服を組み合わせた治療が主になります。繰り返すケースも多いため、日ごろから自宅での正しいお耳のケア、病院での定期チェックを心掛けましょう。
膿皮症
ブドウ球菌(Staphylococcus pseudintermedius)という細菌が原因となって起こる皮膚の感染症です。このブドウ球菌は普段悪さをしない常在菌の一種ですが、アレルギー疾患やホルモン異常などの基礎疾患により皮膚のバリア機能が落ちた状況で過剰増えることで皮膚炎を引き起こすことが分かっています。症状としては、皮膚のかゆみ、赤み、膿疱、円形の脱毛、瘡蓋やフケなどがみられ、細菌が活発になる高温多湿の夏季に症状が悪化する傾向があります。
皮膚スタンプ検査や感受性検査などで診断を行いますが、高齢で皮膚症状を繰り返す子の場合、基礎疾患が無いかより詳しい検査を行います。
治療は、抗生物質(外用・内服)の使用や薬用シャンプーを用いた薬浴などが主になりますが、飼育環境や食餌、アレルギーなど複数の要因が複雑に絡み合っているケースも多いため、原因に応じたケアや治療を組み合わせて行います。
皮膚糸状菌症
皮膚糸状菌(Microsporum canis)という真菌(カビの仲間)が原因となって起こる皮膚の感染症です。
ねこちゃんでよくみられる病気ですが、わんちゃんや人に感染することもある‘’人獣共通感染症‘’の一つです。皮膚糸状菌に感染すると、特徴的な円形の脱毛が見られ、徐々に広がり、フケや赤み、二次感染による痒みを伴うようになります。
診断は、病変部の被毛検査や真菌培養検査によって行い、症状に応じて抗真菌薬の外用薬や内服で治療を行います。病変が広範囲にわたる場合は、病変部の毛刈りを行い薬用シャンプーで薬浴をすることもあります。
耳血腫
耳介の中の血管が破れ皮膚の下に血液や漿液が溜まる状態をいい、わんちゃんに多く見られます。
原因は様々ですが最も多いのは外耳炎の悪化によるものと考えられています。アレルギーや細菌、真菌、耳ダニなどの病原体の感染、外傷、異物の迷入、腫瘍などが原因となり、耳道や耳介に炎症や痒みを引き起し、耳を掻く、こする、振るなどの物理的な刺激から耳介内の血管が破綻することで発症します。
治療は、貯留した液を注射針で抜き、消炎剤を注入したのち、刺激が加わらないよう耳介を体に密着させ包帯で固定します。
多くが、一度の処置では完治せず、繰り返すことが多いため、状況に応じて手術で治療を行うこともあります。
皮膚科で代表的な病気
- 食物アレルギー
- 脂漏症
- 化膿性外傷性湿疹(ホットスポット)
- マラセチア性皮膚炎
- ノミアレルギー性皮膚炎
- 疥癬
- ニキビダニ症(毛包虫症)
- 粟粒性皮膚炎
- 天疱瘡
- エリテマトーデス
- ぶどう膜皮膚症候群(フォークト‐小柳‐原田病様症候群VKH)
- 甲状腺機能低下症
- クッシング症候群
- 性ホルモン性皮膚疾患
- 寒冷凝集素症
- アロペシアX
- 肥満細胞腫