内分泌科
内分泌科とは
副腎や甲状腺、上皮小体、膵臓、性腺など、ホルモンの分泌に関わる臓器の疾患を対象とする診療科です。
それぞれの内分泌線から分泌されたホルモンは、特定の臓器でその作用を発揮し、体液量やミネラルバランスなど体内の環境を一定に保つほか、成長や代謝を調節する働きを担っています。それらのホルモンの合成や分泌、作用などに異常を来すものを内分泌疾患といい、中高齢のわんちゃんねこちゃんで多く認められます。
よくみられる症状
- お水をたくさん飲む
- おしっこの量や回数が増えた
- 痩せてきた
- 皮膚が乾燥して黒ずんでいる
- 全身的に毛が薄くなった
- お腹が張ってきた
- 呼吸が早くなった
- 元気・食欲が減った/増えた
当院でおこなう主な検査
- 身体一般検査:触診をはじめ、体型の変化や皮膚の異常がないか全身の状態をチェックします
- 血液検査:特定のホルモン値の測定や、各臓器の機能の評価をします
- 尿検査:尿比重や尿中に異常な成分が出ていないかの確認をします
- 腹部超音波検査:臓器の形態や血流などの評価をします
- 血圧測定:収縮期血圧、拡張期血圧、平均血圧を確認し、高血圧や低血圧がないかを確認します
内分泌科でよくみられる病気
クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)
中高齢のわんちゃんに多く見られ、腎臓の側にある“副腎”という臓器から副腎皮質ホルモン(コルチゾール)が出すぎてしまう病気です。
このコルチゾールは、体をストレスから守ったり、体内の水分や糖、塩分量を一定に保つ作用、炎症を抑える作用、免疫を調整する作用を持っており、生きる上で必要不可欠なホルモンです。
このホルモンが過剰に分泌されることでそれぞれの働きは乱れ、免疫力の低下に伴う感染症や糖尿病などの合併症を起こし、進行すると命に関わることもあります。クッシング症候群の主な原因は、①脳下垂体の腫瘍によるもの(PDA) ②副腎そのものの腫瘍によるもの(AT)の大きく2つに分かれ、わんちゃんの90%近くは①によるものと言われています。
診断には、一般の血液検査のほかACTH刺激試験という特殊な血液検査(コルチゾール値の測定)と、左右の副腎の形やサイズを確認する腹部超音波検査を合わせて行います。
治療法は原因が①か②かで異なり、①の場合、内服薬で副腎から出るコルチゾールの量を抑える治療が主となります。②の場合は、手術による副腎の摘出が第一選択となります。内科治療では生涯投薬が必要になりますが、生活の質(QOL)を高め、長期的な予後が期待できます。早期発見・早期治療が非常に大切な病気です。
甲状腺機能亢進症
中高齢のねこちゃんに多く見られ、喉の気管の側にある“甲状腺”という臓器から甲状腺ホルモン(T4)が出すぎてしまう病気です。
この甲状腺ホルモンは体内の代謝を活発にする作用を持ち、細胞の新陳代謝を高めたり、体温や心拍数、血圧など体内の環境を一定に保つ働きを担っています。
このホルモンが過剰に分泌されることで、新陳代謝が亢進し、食べても痩せる、大声で鳴く、攻撃的になる、心拍数の上昇、高血圧、多飲多尿など様々な症状を引き起こし、進行すると心臓や腎臓などの重要な臓器にダメージを与え、命に関わることもあります。
甲状腺機能亢進症の主な原因は、①甲状腺の過形成もしくは腺腫 ②甲状腺癌 のいずれかで、悪性の甲状腺癌は2%程度でほとんどが良性の過形成か腺腫であると言われています。診断は、頚部の触診や超音波検査、一般の血液検査のほか甲状腺ホルモン(T4)の測定を合わせて行います。
多くの場合、内服薬で甲状腺ホルモン(T4)を抑える治療が主となりますが、手術による甲状腺の摘出を行う場合もあります。内科治療では生涯投薬が必要になりますが、生活の質(QOL)を高め、長期的な予後が期待できます。早期発見・早期治療が非常に大切な病気です。
内分泌科で代表的な病気
- 糖尿病
- インスリノーマ
- 甲状腺機能低下症
- 副腎皮質機能低下症(アジソン病)
- アルドステロン症
- 尿崩症
- 上皮小体機能亢進症
- 上皮小体機能低下症
- くる病