腎・泌尿器科
腎・泌尿器科について
腎臓は尿を作るだけでなく代謝や血圧の調節、造血ホルモンの分泌など身体を維持するために様々な働きを担っていますが、歳とともにその機能も衰えてくることがあります。❝沈黙の臓器❞とも呼ばれ、腎臓病の初期は症状が出ないことも多く、気付いた時にはかなり病状が進行しているというケースも多く見られます。腎臓は一度悪くなってしまうと完全に治すことが難しい臓器ですが、早期発見・早期治療で病気の進行を遅らせることができます。また、膀胱や尿道などの下部尿路の病気は比較的若い年齢から発症し、大切なペットの生活の質(QOL)に大きく影響します。その子の病状に合わせ、お薬やサプリメントを用いた内科的治療や必要に応じて手術などの外科的治療を組み合わせ治療を行います。また、腎泌尿器疾患は食餌の影響が大きい領域でもあります。飼い主様の生活スタイルやその子の性格に合った栄養管理法をご提案いたします。
よくみられる症状
- おしっこの量や回数が増えた
- お水をたくさん飲む
- おしっこが赤い・におう
- おトイレ以外で粗相をしてしまう
- 食欲がない、痩せてきた
- よく吐く
- 毛艶が悪くなった
- 腹部の毛が薄くなる(猫)
当院でおこなう主な検査
- 身体一般検査:腎臓や膀胱の触診や、脱水や貧血などがないかなど全身状態のチェックを行います
- 尿検査:おしっこの性状や中に含まれる細胞・結晶など診断に繋がる情報がないかを調べます
- 血液検査:腎機能を表す尿素窒素(BUN)、クレアチニン(Cre)、イオンバランスをはじめ、早期腎臓病マーカー(SDMA)などを測定します
- 超音波検査:腎臓や膀胱の内部の様子や血流、結石や腫瘍がないかなどの確認をします
- 腹部レントゲン検査:腎臓や膀胱の大きさや形、結石がないかを確認します
- 血圧測定:血管内の圧力を測り、腎不全による高血圧がないかを調べます
- 直腸検査:わんちゃんで前立腺の異常がないか調べます
腎泌尿器科でよくみられる病気
慢性腎臓病(CKD)
慢性腎臓病(CKD)は、ゆっくりと腎臓の機能が低下する病態の総称で、高齢のわんちゃん・ねこちゃん共に非常に多くみられます。病院に来るきっかけとなる症状で最も多いのは“多飲多尿”ですが、進行してくると食欲がなくなる、痩せる、頻繁に吐く、けいれん発作など様々な症状が出てきます。一度悪くなってしまった腎臓の機能を元に戻すことはできないため、若いうちから定期的に血液検査や尿検査を行い早期発見に努めることが何よりも大切です。診断にはIRIS(国際獣医腎臓病研究グループ)が推奨している“IRISの腎臓病ステージングによるステージ分類を行い、その子のステージや症状に応じた治療方針を立てます。主な治療には、食餌療法やサプリメント、症状に応じた投薬治療、脱水の改善を目的とした点滴治療などが挙げられます。長くお付き合いが必要な病気ですが、早期に治療を開始できれば長期的な予後が期待できます。
猫下部尿路疾患(FLUTD)
ねこちゃんの下部尿路に起こる様々な病気の総称です。代表的なものでは、特発性膀胱炎や尿石症(尿路結石)、尿路感染症、腫瘍などが挙げられ、再発を繰り返したり長期的な管理が必要になるケースも多くみられます。 特発性膀胱炎は、検査上明らかな原因が見つからないにも関わらず膀胱に炎症がある状態を指します。発生頻度は非常に多く、猫下部尿路疾患(FLUTD)の全体の約50%を占めるとも言われています。はっきりとした原因は解明されていませんが、膀胱のバリア機能の異常や、自己免疫性疾患、ストレスなどが関与していると推測されています。 尿石症(尿路結石)は若いオスのねこちゃんに多く、腎臓や尿管、膀胱、尿道の中に結晶や結石(ストルバイト・シュウ酸カルシウム)ができる病気で、尿路を傷つけたり、尿道が詰まりおしっこが出なくなる(尿道閉塞)原因となります。尿管や尿動閉塞を起こした場合、急性腎障害(AKI)となり命に関わることもあるため、おしっこが出ない・出にくいという症状がある場合は直ちに受診をしてください。
膀胱結石
膀胱内に結石がある状態を指し、わんちゃんねこちゃん共によく見られます。主な原因には、尿路の感染症、食餌内容や体質などによる体内のミネラルバランスの乱れ、飲水量の減少や長時間尿を我慢することによる尿濃縮などが挙げられます。無症状の場合もありますが、結石のサイズや数によっては膀胱炎や排尿障害の原因となり、結石が尿道に流れ途中で詰まる尿道閉塞を引き起こすこともあります。代表的な結石の成分としてストルバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム)結石やシュウ酸カルシウム結石、シスチン結石、尿酸塩結石などが挙げられます。食餌療法のみで治療が可能なものもありますが、大きな結石や溶けない成分の結石は手術で取り除く必要があります。結石の予防には、こまめな飲水やおしっこを我慢しないようトイレの環境整備が有効です。
腎泌尿器の腫瘍
腎臓や膀胱、尿道、前立腺などにも腫瘍ができることがあります。代表的なものとして、腎細胞がん、リンパ腫、膀胱や前立腺の移行上皮癌などが挙げられます。初期には症状が分かりづらく頻尿や血尿など膀胱炎と似たような症状を示すため、特に高齢の子で症状を繰り返す場合は様子を見ず早期に詳しい検査を受けましょう。
腫瘍の診断は、尿検査や遺伝子検査(BRAF)、血液検査、超音波検査、尿道造影検査、胸部レントゲン検査(転移の評価)、病理組織検査など、状態に応じたものを組み合わせて行います。治療法は、手術や化学療法(抗がん剤)、放射線治療などさまざまですが、その子の全身状態、腫瘍の場所、転移があるかどうかなどで大きく変わってきます。根治が難しいものも多いため、定期健診で早期発見、早期治療に努めましょう。