呼吸器/循環器科
呼吸器/循環器科
近年ぺットたちの寿命が著しく伸び、高齢期の心臓病の発生率が高まっています。心臓病は、がんや腎臓病と並び、わんちゃんとねこちゃん死亡原因の上位を占めています。心臓は一度悪くなってしまうと完全に治すことが難しい臓器ですが、早期発見、早期治療で病気の進行を遅らせたり、大切なペットたちの生活の質(QOL)を高めることができます。
また、気管や肺など呼吸に関わる臓器は、循環器(心臓や血管)と連携して働くため両者は切っても切り離せない関係にあります。咳や息切れなどの症状は、呼吸器、循環器どちらの病気でも見られるため、原因の特定が非常に大切です。どちらも命に直結する臓器で、状況によっては救急対応が必要な場合もあるため、以下のような症状が見られたらすぐに受診をしましょう。
よくみられる症状
- 咳をする
- 呼吸が苦しそう、舌が紫色になる
- 運動を嫌がるようになる
- 食欲がない、痩せてきた
- お腹が張ってきた
- ふらつく、失神する
- 口を開けて呼吸をする(猫)
当院でおこなう主な検査
- 身体一般検査:心拍数やリズム、心雑音の有無、呼吸回数や呼吸様式など全身状態のチェックを行います
- 胸部レントゲン検査:心臓のサイズや形、気管や気管支、肺の状態の確認を行います
- 心エコー検査:心臓内部の構造や動き、血液の流れをリアルタイムで観察します
- 心電図検査:心臓の電気信号を波形グラフにして確認するもので、不整脈がないか確認をするための検査です
- 血圧測定:収縮期血圧、拡張期血圧、平均血圧を確認し、高血圧や低血圧がないかを確認します
- SpO2測定:血液中の酸素の量を調べます
- 血液検査:全身の臓器の数値や、炎症の数値、特殊なホルモン検査などを行います
循環器科でよくみられる病気
僧帽弁閉鎖不全症(MR,MMVD)
わんちゃんで最も多くみられる心臓病で、心臓の左側にある「僧帽弁」という弁がうまく閉じられなくなり、左心室から左心房に血液が逆流してしまう病気です。5歳以上の小型犬に多く、特にキャバリアキングチャールズスパニエルやチワワ、ヨークシャーテリア、マルチーズ、シーズーなどで多く見られます。僧帽弁閉鎖不全症になると全身に血液を送りづらくなり、咳や息切れなどの症状が見られるようになり、悪化すると肺に水が溜まる“肺水腫”という状態が引き起こされます。複数の検査を組み合わせ、ステージ分類(ACVIM分類)というものを行い、状態に応じた飲み薬で心臓の収縮力や血圧をコントロールする内科治療が主となります。ステージB2以上で治療が必要となり、長くお付き合いが必要な病気ですが、早期発見‣早期治療で進行を遅らせることができます。
肥大型心筋症(HCM)
ねこちゃんで最も多くみられる心臓病です。心臓は筋肉(心筋)でポンプのように動き、全身に血液を送り出しています。この心筋が何かしらの原因で分厚く変化してしまうことで全身に十分な量の血液を送れなくなってしまう病気を肥大型心筋症といいます。一見健康に見えるねこちゃんの約15%がこの病気を持っていると言われ、進行すると息切れや失神、血栓がつまることで起こる後肢の麻痺などさまざまな症状が出てきますが、初期は症状が分かりにくく30-50%が無症状という報告もある非常に怖い病気です。好発品種にはアメリカンショートヘアやメインクーン、ペルシャ、スコティッシュフォードなどが挙げられますが、どの種類のねこちゃんでも発症する可能性があります。複数の検査を組み合わせ、病気のステージ分類(ACVIM分類)というものを行い、状態に応じた飲み薬で血栓をできにくくしたり、血圧をコントロールする治療が主となります。
その他の代表的な病気
- 三尖弁閉鎖不全症(TR)
- 拡張型心筋症(DCM)
- 拘束型心筋症(RCM)
- 心房中隔欠損症(ASD)
- 心室中隔欠損症(VSD)
- 動脈管開存症(PDA)
- 大動脈狭窄症(AS)
- 肺動脈狭窄症(PS)
- ファロー四徴症(TOF)
呼吸器科でよくみられる病気
気管虚脱
わんちゃんでよくみられる呼吸器の病気です。呼吸をする際に空気の通り道となる気管がつぶれて狭くなることで、ガチョウの鳴き声のような咳が出たり、呼吸が苦しくなるという症状が見られます。一般的に中高齢の小型犬で多く見られ、好発犬種にはポメラニアン、チワワ、ヨークシャーテリア、トイプードルなどが挙げられますが、柴犬やラブラドールレトリーバーなどの中・大型犬でも見られることがあります。犬種ごとの骨格の特徴や肥満、他の病気の関与など、誘発される原因はいくつか分かっていますが、はっきりとした発生原因は未だ解明されていません。気管虚脱にはいくつかタイプがありタイプごとに治療の方法が異なりますが、お薬で内科的に咳をコントロールする治療が主となります。
短頭種気道症候群(BAS)
ブルドッグやパグ、ボストンテリア、ペキニーズなど、生まれつきマズルの短い品種(短頭種)のわんちゃんでよく見られる上気道の異常の総称です。ペルシャやスコティッシュフォールドなどのねこちゃんでも稀にみられます。見た目を可愛らしくする品種改良の結果、鼻の穴が狭く閉じてしまう『外鼻孔狭窄』や喉の奥の柔らかい組織が長くなりすぎてしまう『軟口蓋過長』が生じ、空気の通り道が狭くなることでガーガーという呼吸や慢性的な咳、いびきによる不眠などの様々な症状を引き起こします。より重症化すると、高体温による熱中症や呼吸困難による窒息など命に関わる危険な状態に陥る可能性があります。
物理的な形態異常であることからお薬で改善はできないため、手術で鼻孔狭窄の矯正、軟口蓋の切除など呼吸を楽にするための術式をとります。短頭種気道症候群は年とともに進行するものであり麻酔後の合併症リスクも高くなることから、当院では、若く症状も軽い時期に予防的に手術を行うことを推奨しております。去勢手術や避妊手術のタイミングで同時に実施することも可能ですのでご相談ください。
その他の代表的な病気
■上気道(鼻から喉にかけて)
- 猫の上部呼吸器感染症(猫かぜ)
- 鼻腔内腫瘍
- リンパ形質細胞性鼻炎
- 歯周病関連の鼻炎
- 慢性副鼻腔炎
- 短頭種気道症候群
■中枢気道(気管から主気管支にかけて)
- 動的頚部気管虚脱
- 気管・気管支軟化症
- 犬伝染性気管気・管支炎(ケンネルコフ)
- 気管・気管支炎
■末梢気道および肺実質
- 慢性気管支炎
- 猫喘息
- 気管支拡張症
- 肺炎(細菌性、誤嚥性)
- 肺腫瘍
- 肺水腫(心原性、非心原性)
- 肺葉捻転
- 肺血栓塞栓症