先日、ある小学校の校長先生からお話を伺う機会がありました。少ない生徒と小さな校舎で、先生方が生徒に寄り添って授業をしている。質素だとおもう。

校長先生はこんなことをおっしゃっていました。

「自分が持っている能力は、他人のために使う」

「誰とも比較しない。きょうだいとも」

勉強して、努力して知識や技術を身につけて、それを自分の利益のためだけに使う。単純化していえば、私の若いころの生き方はそうだったような気もする。私もそれなりに野心というものも持っており、なにか、自分にしかできないものがあるのだと無根拠に信じてもいました。

でも、この年になると、自分は傑出した人物でもなければ、かといって、全然だめな人間でもない、「ふつう」の人間だということにいい加減気づきます。自分のために自分の能力を使ったところで、たどりつける地点はたかが知れています。

一方で、仕事のしあわせというのは、難しい課題をクリアするやりがいにもあるのでしょうが、やはり、だれかをしあわせにしたり、その結果として、感謝されたりすることにあるのだとおもいます。だれにも感謝されない仕事というのは、とてもしんどい仕事でしょう。

「他人のために自分の能力を使う」という考え方は、43歳になったいまなら、とてもすばらしいものだと共感できます。

獣医師というのは国家資格で、独占的な資格です。それをいかせる今の立場をとてもありがたいとおもいます。

獣医師は「先生」と呼ばれます。「先生」と呼ばれてつけあがることはせず(つけあがったことはないとおもっていますが)、むしろ、獣医師の仕事をさせていただいているありがたさを日々噛みしめながら、持てる能力を動物たちとその飼い主さんに提供できたらと考えています。

こう書けば、いかにも格好いいのですが、持てる能力もまだまだ不十分です。日々、精進です。